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旅スケッチ

​08イタリヤ2

ホテルの客室からの眺め

 ツアー旅行の行程の中で、唯一まとまったスケッチ時間が少しとれるのは、ホテル滞在中です。もっとも、戸外が明るければ、ですが。客室から、イタリヤの風土や庶民感覚がみえかくれしています。駐車場のない街がほとんどで、みんな路上駐車です。もちろん合法的に駐車可の場所に。ほとんどびっしり数珠繋ぎ。イタリヤではドアロックせずに、ハンドルロックします。自分の車を出すときに、前後をはさんでいる車のドアを開けて、サイドブレーキを解除して、自車が出せるくらいのスペースを作って自車を出します。車の中に、大事なものは置いておけませんね。

 

 

 

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上は、ベネツィアのホテルの客室からです。ヨーロッパ的な風景が広がっています。早朝、描き始めたころから、また次第に暗くなってきて、どしゃ降りの雨です。遠くで雷も見えます。長時間降り続くことはないとのことでしたが、この日はそのまま午前中雨。雨中のゴンドラ、となりました。
 下は、フィレンツェのホテルの客室からです。遠くに、レオナルドも見たと同じ山があります。うれしいです。なんだか色彩ゆたかな感じがします。突然、太陽が顔を出しました。日の出です。なんだか日本の太陽より大きく見えます。いや確かに大きいぞ。

イタリヤにはあじさいもあり、夾竹桃もあり、日本でみるのとほとんど同じ植物が見られました。ただ一つ、珍しかったのは笠松です。日本ではほとんどみかけません。名字にはありますが。木の上の方に、巨大なきのこのような形で、枝葉が茂っています。かなり大きな木もあり、幹もごつごつと立派です。どの木も個性的です。アッピア街道は笠松の並木が一直線に続いていて、壮観です。昔の東海道五十三次の広重の浮世絵に、黒松の並木道を描いたと思われるものがいくつかありますが、大きな木の並木道はいいですねえ。大事にしたいです。ローマ市内も笠松が多くみられました。
 右は、ベスビオ山と笠松、下はローマのホテルの客室から見えた風景です。笠松、気に入りました。

 

 

 

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ナポリのホテルです。窓枠の金具やカーテンのひもがかなりくたびれかかった、たった一枚の小さな窓が、狭い中庭に面しているようでしたが、鎧戸もおろされてあり、戸外が描けなかったので、洗面室を描きました。私が泊まった部屋は、マフィアでも出てきそうな(実際にはそんなことはないだろうが・・・)やや怪しげな雰囲気で、ちょっと古い感じの広くない、やや薄暗い部屋でした。裸電球がやっぱり怪しげな雰囲気を醸し出しています。こういうのは、小説の舞台に入りこんだようで、ひそかにわくわくします。
 ところで、画家が使う色の名前に、ネイプルスイエローというのがあります。マヨネーズに少し黄色を混ぜたような色です。ネイプルスとは、「ナポリの」という意味の、英語読みです。つまりこの色は、ナポリの街では、いたるところ、たとえば掘り起こした地面や崖の層のだったり、建物の外装だったり、に見られます。そしてここ怪しげなナポリの旅館の一室も見事に、ナポリ色のタイルと装飾でして、画家としては、色のオリジナルの地と密室に来ることが出来た実感で、感無量です。その一面の黄色に、エーゲ海のウルトラマリンの深い青い色を思わせるタイルのラインも、アクセントとして、はめてあります。派手ではありませんが、おしゃれな組み合わせです。
 ついでに言えば、カンポ広場のあるシェナの「シェナ」も、まさに絵の具の色の名前が、土地の名前からきています。ローシェンナ(自然の茶色)バーントシェンナ(焦げ茶色)等・・・。今回の旅において、二つの街の色と絵の具の色が、まごうことなく、そのまま土地の色イコール絵の具の色であることを目の当たりに出来て、感無量です。

 

 

 

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フィレンツェからナポリまでは、新幹線ユーロスターでの旅でした。列車に乗り込むと、すでに、外人がすました顔して座っています。座席指定にもかかわらず、みんな勝手なところに座っています。フランスでもそうでした。特に悪びれた様子もありません。日本なら・・・。これがいわゆる意識の違い、文化の違いでしょう。まず、彼らをどけて、次に日本人ツアー客が、しかるべく座席に、各自間違いなくきちんと座ります。四人がけのボックス席の前横には、Mさん三人グループです。おやじさんはビールが大好きで、ありがたいことに、私も、お裾分けにあずかりました。うまいビールでした。感無量です。ありがとうございました。それにしても、缶の絵(デザイン)もいいですね。どんな味かな、と、思わず思ってしまう。楽しみを呼び起こすデザインです。楽しい気分にさせてくれるデザインこそ人間らしいデザインではないでしょうか、と、わが日本ののビールのデザインをいくつか思い起こして、比べてしまいました。

 

 

 

おしまい

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