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旅スケッチ

06インド3

アジャンター

 アウランガバードから、北東へ車で約2時間半、仏教壁画で有名なアジャンター石窟寺院群。(2006年12月12日)朝7時10分ころホテルを出発。ナワンさんの運転するホンダ号で。車は、開けた大地の上を順調に走る。ところどころ、やや大きな集落や青空商店街を通り抜ける。行程の3分の2ほど来たところで田舎のドライブインで休憩。チャイを頼む。インドのチャイは、いつどこで飲んでもおいしかったです。紅茶にミルクにしょうがやガルダモン。砂糖もたっぷり。ここの少年はよく働く。明るく快活。11才くらいかな。車の誘導に、両替に、注文取りに、全力疾走だ。テーブルはよく拭いてあるし、きれいに、朝顔などの花も生けてある。

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 休憩後、約1時間たらずで、アジャンターの入り口へ到着。でもそこからさらに乗り合いバスに乗り換えて、約10分で本当の入り口に到着。湾曲したワグラー川沿いの岩壁の中ほどに、それぞれの石窟の入り口が見える。全部で26窟。いまはちょうど乾期なので川の水量もさほどなく、さながら日本の川のせせらぎのよう。ハイビスカスか夾竹桃のような鮮やかな赤い花が咲いている。歩道の上をシマリスがちょろちょろ走る。ときおり黄緑色した、やや大きな鳥がばさばさと、あっちの梢、こっちの梢へ飛び交う。おうむです。

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  チケット売り場で5ドルの拝観料を払って入場。今日もいい天気です。ガイドブックに書いてあるほど陽射しがきつくもなく、快適。きっと、時期が良かったにちがいない。各石窟には、地元の人も欧米人もわれわれも、靴脱いではだしで入る。
 まず第1窟。仏教壁画としてもっとも有名な石窟です。ちょっとどきどき。法隆寺の金堂壁画のもとになったと言われている、ということで前から大きな期待をしていたものだ。そろりと中に入る。くっ暗い。ほとんどまっくら。壁画の保護のため、照明は、日本の発光ダイオード技術で、しかも最低限の白さで照らされている。いやはや、それはそれで必要なことだ。と思うものの、目が慣れるまで、目前の人にぶつからずに歩くのが精一杯。
 ガイドブックに載っていたものがそこにある。こう思うとうれしくもあった。が、さらに壁画保護のため、5メートルくらいのところにロープあり。なにもかも、もどかしい。フラッシュ、三脚不可。デジカメ撮影を試みるも、何度トライしても手ぶれマークが出る。観光客泣かせでした。

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現場でのスケッチでは、こういう暗い状況ですので、着色はできません。(手元のパレットなどほとんど見えません)でも、白色ダイオード照明のおかげで、壁画の色をよく見ることはできました。
 実物はガイドブックの写真よりはるかに鮮やかです。(右)の菩薩の腰巻き?の縞模様は、きれいな赤と白でした(ガイドブックの写真だと、全体的に茶色っぽい)。どの柱、どの壁にも様々な装飾文様や、いろんな仏教的な場面が描かれている。ジャングルやゾウや、さまざまな人々の姿が見える。墨を用いた線は、よどみなく一気に、すらすらと何の苦労もなく描かれている。下絵用の当て紙あててなぞったような感じはみじんもない。(そんな小細工してる暇もないだろう、なにしろアジャンター壁画の総面積は、想像できないくらい広大)。線が生きている。太陽の光など決して届かない洞穴のさらに奥で、一体どのようにして、色を見分け、着彩していったのか。うーーむ、いにしえの、インドの画人たちの能力と感性と技術と腕に、しばし黙り込んでしまう自分でした。

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 壁画だけではなく、彫刻もある。ここアジャンターでは、一番奥まった部屋には、どの石窟も(左)のような冥想するブッダの彫像がある。
 彫刻もなかなか良い。特にブッダを守る力士やライオンなどが、エローラ同様、とっても魅力的。かわいい。持って帰りたい。

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 (左)の力士像は、意外なところに彫ってある。柱と天井のつなぎの部分に、です。第16窟の入り口をくぐって、やや上を見上げたところにある。ひとつふたつではない。十数本もの窟を支える柱の上部ひとつひとつに、それぞれ異なった体型、顔、表情、(場合によっては男女の像)がある。これを彫る彫刻家は、さぞかし大変だったにちがいない。仰向けにならなきゃ彫れない位置だ。彫った岩のかけらは必ず、自分の顔面に降りかかってくるはず。今のように、強化ガラス製のゴーグルがあるでもなし。すんごいこと。いやはや、まいります。何が彼(彫刻家)をこうさせうるのか。人間の意志は石をも砕くってわけか。

エローラのゾウも立派でしたが、アジャンターのゾウも立派でした。

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 第1窟の二つの菩薩の壁画とともに、アジャンターでどうしても描いておきたかったのが、第26窟の釈迦涅槃の彫像でした。身を横たえたブッダの像。足元から頭まで11メートルもある、ブッダの頭上には、沙羅双樹がやさしくそしてちょっと悲しげに枝を広げています。石なのに柔らかいクッションを感じさせる枕のへこみ方。お顔に近づいて触ってみると、結構大まかな彫りなのに、不思議なるかな、スケッチできる位置まで離れてみると、その穏やかな表情、しずかに息をしているかの感じ、やさしげな雰囲気がよくわかる。味わえる像です。

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 滞在可能な限り、アジャンターを見て、気がつくと3時をすぎていました。水だけときおり飲んで、ほとんど休憩もせず。帰りはまた2時間くらいかけて、インドの田舎道をかっとばして、家路へ急ぐオートバイや牛車や動物たちを追い越し、アウランガバードのホテルの近くまでまで戻ってくる。このころにはとっぷり日が暮れていましたが、アウランガバードの特産品である、絹織物のお店に立ち寄りました。ヒムローと呼ばれています。このお話はまた、次回。

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