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旅スケッチ

カンボジア07(アンコール遺跡群)

​アンコールワット

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2007年12月5日の午前6時すぎころのアンコールワット。
やや雲がかかっている、それがために、かえってものすごい朝焼けとなりました。、まるでオーロラのように刻々と変化する大空。僕のすぐ前の、カメラを並べた日本人の写真クラブのみなさんから「うおー」っという声があがる。青くシルエットになった遺跡から、古代のオーラが時空を越えて立ち上ってゆく。それ迎えるかのように、鮮やかなピンク色の光の波がゆらめく。落ち着けったて無理だ。僕も全身全霊が震えてしまって、水彩の筆のさばきもおぼつかない・・・。2,3分か5,6分か、すごく短い時間だった。が、すごく深い時間だったような気がします。
 その後、覆われた雲のため、朝日が顔を出すことはありませんでした。でも残念だとも思わなかった。だってどんな写真集にも載っていない、今日のような朝焼けに、どんぴしゃで遭遇できたんだもの。すべてはうまくいっています。

バイヨン(アンコールトム)

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バスを降りると、目の前に、石積みの大きな門が見える。四面に人面が彫ってある。観光パンフに必ず出てくるイメージです(上)。南大門の観音菩薩です。
 その門の手前には、これも石彫の、蛇神ナーガーを引っ張る阿修羅達(力士)がずらっと並んでいる。ナーガーの太い胴をむんずと抱え込んで、両足でふんばっている。とっても好きなイメージだな。愉快。この阿修羅さん達の顔の多くは、破損のため、近代に作り替えられているが、古代のものもいくつか残っていて、それがとっても良い表情。生粋のクメールのたくましい大男がどっしり構えててすばらしい(下)。必ずやもう一度来たときには、しっかりデッサンしたいと思わせるものの一つ。

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まず、回廊を巡る。ここバイヨンではレリーフもすばらしい。古代のクメール人の生活が生き生きと描かれている。舟で川を行く人々、その舟の櫂(オール)をかいくぐって泳ぐ大小さまざまの魚たち、その魚を捕らえようと潜るひとびと、突然襲いかかる荒々しいワニ・・・。レリーフの見本です。ものすごく良いです。作者の天才がすばらしく発揮されています。楽しいね。飽きないね。芸術はこうでなくっちゃならん。

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 95パーセント(85パーセントだったかな)の日本人言うそうです、ある有名人そっくりだと、と現地人ガイドが言う。だれだ、だれだ、どれだ、どれだ?とみな口々に言いつつ先へすすむ。そしてありました。たしかに、いきいきとある。京唄子さんです。どの人面も多かれ少なかれ京唄子さんに似てはいるが、確かにこの一点については、文句がでない。ちょっと笑んでいるようなくちもと、唇。なんだか京唄子さん本人に会って、おがみたくなる、そんな気分になりました。(下左)
 今度は世界の人々にとって最も有名な観音様です、とガイドが言う。(下右)なるほど、きりっとした表情。観音のなかの観音にふさわしいかも。クメール人の面影ですてきな表情です。みんながそれぞれ記念写真を撮っている間もデッサンしてると、いつものように列の最後尾に。気をきかせてくれた添乗員嬢に、すばやく一枚とってもらいました。お気に入りの写真の一枚。

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タ・プローム

  何百年もの間、人々の記憶から消えて、再び脚光を浴びた遺跡。人工力の究極の結晶も、自然と時間のエネルギーの前にはこうなります、という見本のようなのがこのタ・プロームと呼ばれる遺跡。積まれた石と石の間に根を伸ばし、太り、やがて遺跡を飲み込んで遺跡をつぶし・・・。やがて自らも倒れる巨木・・・。ありんこのような人間が写真に収まる。4.5年後には、立ち入りさえも危険な状態になります、とあっちのガイドもこっちのガイドも説明しています。数百年の時間のなかで、これは危機一髪で描いたスケッチというわけか・・・。(冷汗)

多くの遺跡を見ましたが、修復中のものがほとんどです。遺跡の壁面を飾る多くのデヴァターと呼ばれる女官たちのレリーフもすばらしいものがあります。が、今回は全く描く時間が取れませんでした。東洋のモナリザと呼ばれている美しいデヴァターにも感動しましたが、遺跡保存上の規制があって、スケッチするにはあまりに遠すぎました。でも実物を見られて良かった。写真で見るよりはるかにふくよかで慈愛の微笑みがすばらしい。好みで言えば、モナリザより好きだな。

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ブリアコー

バコン

滞在中は、だいたいお天気も良く、不快なほどの暑さでもなく、気持ち良く過ごせました。どの遺跡もよくぞまあ人力でこれほどまで巨大なものを作ったなあと、わがことのように、人類のすばらしさを感じます。でも遺跡は、創建当時の荘厳な姿から徐じょに自然に戻ろうとしているかのようでした。まるでそんなことも関係ないかのように、青空は、千年の昔もこうだったろうと思わせるほど水色です。今も昔も白い雲が流れていきます。

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プレループ

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ニャック・ポアン

多くの遺跡が、その豪華さ、絢爛さ、権力の強さ、など誇示するかのごとくで、威厳の気を感じてちょっと疲れたところに、このニャック・ポアンは、異なった印象を持ちました。なんだかやすらかです、ほっとします。カンボジア人に最も顔が広いです、とガイドがいうところの王様、ジャーヤーバルマン7世が、庶民の病気を快癒させるべく設けた沐浴場です。なるほどなあ。暖かい心を感じます。スケッチでは全体像がわかりにくいですが、周囲に四つの池をもち、これは中央の大きな池のその中央のモニュメントです。訪れた時期は、乾期のためもあって、水はほとんど干上がっている状態でしたが、創建当時は、沐浴にほどよい水が張られていました。今も昔も、病にたいする人々の思いは同じだなあ、治りたい人の心と治してあげたい人の心・・・。周囲の木立も、吹き抜ける風も、なんだか優しげに思えました。

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プノンバケンの丘から夕陽

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夕陽スポットナンバーワンのプノンバケンの丘に登り、カンボジア平原に沈み行く夕陽を眺める。この遺跡はちょっと登るのが大変。次第に薄暗くなってゆく山道を10分以上も歩き、さらに遺跡の石段をよじのぼる。最後はとてつもなく急であるとともに、幅が10センチもない。つま先をしっかりのせるか、足を横向きにするか、だ。一段の段差は大きいところで40センチ以上あるところもある。ツアーの皆さん老若男女、四苦八苦しながらも全員登る。ここまで来てのぼらんで帰るわけにゃいかん、と言う声も聞こえるガッツ。すごかったです。登ったところは少し広いテラスになっていて、日本人やらヨーロッパ人やらでひしめきあっていました。まるで新宿駅の通勤状態。夕陽のこちらにアンコールワットがシルエットになって見えるものとばかり思いこんでいましたが、実際は方向違い。それでも青い大気のなか、ジャングルの林から抜きでるようにすっくりと、五つの塔を認めることができて大変美しい。(下のスケッチのまん中あたりにアンコールワット)

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遺跡を見て思ったこと

 千年前後も前のクメール人の偉大なる魂と創造力に感服です。十分に感服しました。わっと、驚くことたびたびでした。もう一度(アンコール)、と思いました。やはりアンコールワットでした。(失礼しました)その規模の大きさ、手に汗にぎるほどの努力の痕跡。生き生きとした美しいレリーフ。それらが一度は歴史の表舞台から姿を消し、文字通りジャングルの中に姿を隠し、あるものはそのまま自然に戻り、あるものは再び人類の目の前に甦る。世界遺産に登録され、えっきーさんのような観光客が世界中から集まってくる。それにしてもどうして甦ったのかな?あるフランスの探検家が再発見したとパンフレットには書いてありますが、それはそれで事実でしょう。しかし、私は感じました。人間がものすごいものを創る、あるいは成し遂げようとするとき、その波動が地球から宇宙に向かって発せられ広がってゆく。池に放り込まれた石の波紋が広がって、対岸からまた元の位置に戻ってくるように、あるいは異なる場所へ波動を運んでゆくように、再び人間の心がその波動をキャッチしたと。千年前にクメール人が発した波動が、時空を超えて、再び宇宙から舞戻ってきて私の心にエコーのように響いた、確かにそれを感じました。嬉しく思いました。

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